-タケナカのこれ思てんねん。-
第9回『ひっかかっている言葉について思てんねん』
こんにちは。
ことば部部員のタケナカと申します。
今年でアラサーの道に一歩踏み出しました。
昔から読書が好きで、基本的にどんな本も読みますがテーマが重ための本が好きです。細かいことが気になり、つい言い過ぎて母から小姑と呼ばれた事があります。
こんな私が普段うっすら思っているあれやこれを徒然に書くエッセイ「タケナカのこれ思てんねん。」
毒にも薬にもならないけど「なるほどなぁ」となるかもしれない、超プラシーボなエッセイです。
募集しているみなさんの「思てんねん」なこと、たくさんの投稿をありがとうございます。
たまには自分の思っていることも書こうかしら、ということで……。
第9回はひっかかっている言葉について僕の思うことを。
今回もひとつ、お手柔らかにどうぞ。
「ぬくたい湿度」
最近はどうもめっきり暑い。日差しは強く湿度も高く、年々イヤな夏になってゆく。こんな日はキンキンに冷えた飲み物やかき氷などで一つ涼みたいものだ。関西では冷たいものを「ひゃっこい(冷っこい)」と言う。調べてみると「ひやこい」「しゃっこい」など源流・派生は色々とあるが、割と全国各地で使われている方言らしい。恐らく「ひやこい」がスタンダードで訛って「ひゃっこい」となったのだろう。
では、「ひやこい(ひゃっこい)」の対義語はなにか? 冷の反対だから温、冷やこい(ひやこい)の対は温い(ぬくい)となる。これは分かる、寧ろよく使う。ただ、稀に温たい(ぬくたい)という人がいる。どこかの方言なのかもしれないが、 この「ぬくたい」という表現が私の中でどうも引っかかる。なんなんだ、「ぬくたい」って……。
というわけで、今回は「ぬくたい」にフォーカスをあて、言葉や音声の持つニュアンスについて思ってることを書いていこう。
(※ここからは超個人的&抽象的な話になっていきます!)
同じ感覚を共有するために、まずは「ひやこい」を声に出してみてほしい。「ひや」を発音するときの母音の口の動き(ia)は音を平たく遠くへ伸ばし、「こい」(oi)で下に落とす感じがあるはず。「ひ」(hi)のイ段特有の軽やかさな冷たさに「やこい」(yakoi)の直線的で角ばった音。氷の入ったコップに水を注いでカランと鳴ったときの感じがある。音自体に湿度がなく、 あるのはキンとした心地よい清涼感だ。
では「ぬくたい」はどうだろう。「ぬく」の時点で雲行きが怪しい。母音が(uu)である言葉特有の、丸さと質量と熱気がある。ここに追い打ちをかけるように「た」(ta)がやってくる。舌が上顎の裏にぺたりと触れる。 「ひやこい」の「こ」が点/線だとしたら「た」は面だ。「ぬく」(nuku)に続いて舌を広げた動きが、口内にボテッとした重みとネチッとまとわりつく湿り気を感じさせる。
ここまで力説すると、「冷たい」だって「た」を使っているではないか!という意見も挙がる。だが言わせてほしい、「つめたい」と「ぬくたい」では「た」のニュアンスが全然違うではないか! そもそも「冷たい」の「つめ」(tume)は硬さがある。「つ」がタ行の冷たさを、「め」がマ行の重量を担っている。例えるなら分厚く重い水族館のアクリルガラスという感じだろうか。このニュアンスに丸みを持たせてくれているのが「た」の存在だ。「つめ」までの重苦しい感じにパッと明るさを添え、丁度いいバランスで「い」(i)にアシストしている。
しかし、「ぬく」という重さ・丸さのある音の後の「た」はどうも分が悪い。「ぬく」で生まれた湿度は「た」で逃げ場を失い飽和状態と化す。 「ぬくい」はいい。「ぬく」が醸し出す丸みが、おまんじゅうのようなぽってりした可愛さを演出している。 しかし「ぬくたい」になった瞬間、そこに「体温」や「まとわりつく水分」が介入してくるのだ。なんと言うか、誰かが座った後の生暖かい椅子やムワッとした更衣室のような、あの、むんっとしたまとわりついて離れない感じ。 「ぬくたい」には嫌な湿り気が宿っている。
「新世代ぬく◯いオーディション」
散々「ぬくたい」(特に「た」)を糾弾してきたが、このままお終いは少し可哀想だ。ということで、後半は「ひやこい」と並んでも遜色ないようなカラッとした「ぬく◯い」を探していこう。
五十音を「あ」からローリング方式で、パワープレイで当てはめていってもいいが、それではあまり美しくない。なので、まずはルールを準備しよう。
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▶ルール
・当てはめるひらがなは「あ~ん」の五十音のみ
・「がぎぐげご」や「ぱぴぷぺぽ」のような濁音・半濁音はなし
・もちろん「、」「。」の句読点もなし
・「た」の意思を継ぐ言葉としてア段からのみ選ぶ
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敷くべきルールとしてはこんなものだろうか。
では、早速探していこう。
上記のルールで「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ」の10個。前述のとおり「た」はないものとして捉え、9つに絞り込むことができる。 ここから無理のある(ニュアンスの違う)選択肢を除外していく。
(ぜひ一緒に声に出して読んでみてほしい)
【あ】ぬくあい
まずは「あ」であるが、「ぬく・あい」となり母音が連続するため音が間延びしてぼんやりしてしまう。湿度はないが重さを感じ、「ひやこい」の対として不十分であろう。
【さ】ぬくさい
「さ」だとどうだろう。「さい」を発音する時に喉から空気が抜ける感じがする。また、「ぬくさい(ぬくい+臭い)」の合体のようにも聞こえてしまうため、これも適当ではない。
【な】ぬくない
「な」の場合「ぬくない(ぬくい+ない)=温かくない」と否定の意味に捉えられる可能性があり、元のニュアンスから逸脱する。
【は】ぬくはい
「ぬくはい」と吐息多めの音になってしまい、音に湿度と生暖かさをはらんでしまっている。
【ま】ぬくまい
マ行の発音時に唇を閉じるので、吐息の熱が少し篭る。また、「温まるまい」と意地を張っているようにも感じ、形容詞として役割を果たせていないため却下。
【ら】ぬくらい
「ぬくらい」はぬらぬらした感じがして、両生類っぽい水系の生臭さがある。また、「ぬくい+暗い」でニュアンスが変わってしまう可能性がある。(これが一番ヒドい)
【わ】ぬくわい
「わ」(wa)の時にパッと発音に明るさをもたらしてくれてかなり良いが、「〜〜わい」のような老人的ニュアンスも感じかねない。完璧なひらがなを目指すためにもなしとしておこう。
以上の結果から選抜選手は「か・や」の二つに絞られた。(絞りすぎたかしら?)
ここからもっとも「ぬく◯い」にぴったりなひらがなを見つけ出したい。引き続き検証してみよう。
【か】ぬくかい
まずは「か」、かなり惜しい。「か」の破裂音が空気がスパッと抜け、カ行特有の湿度のなさも見事。対義語としてのバランスは非常に美しい。が、声に出したときにどうしても「かい?」と疑問っぽくなってしまう。この歪さをどうしても見過ごすことができず、二位の座となってしまった。
【や】ぬくやい
残るは「や」。「ぬくやい」、これだ。発音してみてほしい。「や」(ya)は半母音ゆえに舌が上顎につかず、空気がスッと滑り抜けていく。カラッとしつつ見事な温かさだ。また、「ひやこい」の対が「ぬくやい」 となった時、「こ」「や」の突如出てくるアンバランスさも収まりがいい。「ぬくやい」これしかあるまい。
ここからさらに妄想を広げるなら、「ぬくやい」が人々の口に馴染んでいくうちに「ぬくゆい」へと派生して方言化していく未来まで見える。(こういうのが楽しい)「ゆ」に変化した瞬間あの不快な湿度は浄化され、温泉(温湯)のようなたおやかでやさしく心地よい温もりに変わるのだ。
いかがだろう、これからは「ぬくたい」ではなく「ぬくやい」を一緒に使っていこうではないか。
久しぶりに私の思っていることを書き連ねたのだが、想像よりもボリュームが多く支離滅裂になってしまった気もする。「結局こいつは何を言いたいんや」と思っている方もいらっしゃるはず。
今後はもっと読みやすいテーマや文章を心がけますので、ぬくたい目、否! どうか、「ぬくやい」目でこれからも読んでいただけますと幸いです。
好きと嫌いとマイルール、自我と自意識にがんじがらめのぐるぐる人生。
そんな中で普段思っていることをポツポツと書いていきます。
今回も「タケナカのあれ気になるねん。」を大募集!私が気になっていることに、みなさんのとっておきの知恵や経験、アイデアをお裾分けして教えてもらうコンテンツです。
いま気になることは『自分だけかも?引っかかっている言葉』について。
どんな言葉でも構いません、ぜひ教えてください。
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次回の「タケナカのこれ思てんねん。」もどうぞお楽しみに。
